じろりとこちらを見て「なんか用か？」とでも言いたそうな≪オオカマキリ≫です。

　NHKの番組、香川照之の『昆虫すごいぜ！』に、香川さん自身が『蟷螂』の着ぐるみを着て出演されています。歌舞伎役者としても、伝統ある『九代目:市川中車（いちかわ・ちゅうしゃ）』の名で舞台を務める香川さんの、意外な一面が愉しく見られます。昆虫好きの著名人は本当に多く、『バカの壁』で有名な、東京大学名誉教授:養老孟司さんも、筋金入りのマニアです。

　本来、ガチガチの肉食であるこの生物、これからの時期、食べ物も少なくなってくるのですが、一年で、その『生』を終えます。
　交尾を済ませた後、オスはメスに捕食されてしまうというのは、よく聴く話です。実際は、必ずしもそういうわけではありません。…が、メスのお腹の中にある『卵』を成熟させるための蛋白源となるために、オスが身を投げうつ、と考えればどうでしょうか？　子孫を残す、という生物最大の仕事の仕上げに“自分の身体”という栄養の塊を、最有効活用するというわけです。自然界の中での、厳しさと、驚くべき合理性を同時に感じさせられます。

　春先に、卵から「うぢゃうぢゃ」と孵る、蟷螂を見たことがあるでしょうか。あんなにたくさん生まれ出るのに、成虫になるのは、その中の２～３匹だと言われています。
　そんな中の選りすぐられた一匹、逞しい風格のある、個体でした。

寺岡