校長室から
2024年09月04日水
絵本のすすめ
update 2024-09-05 14:22:52
9月3日(火)職員研修『絵本でつながる学級の輪』が開催されました。学級で読み聞かせしたことのある本、「こんな場面で、この本を読んであげるといいよ」というような絵本を持ち寄り、交流し合いました。
絵本には子どもたちのドキドキ感やわくわく感を大切にしながら、学びを深める力があります。絵本の内容を自分たちに置き換えて考えることができると、相手の気持ちへの理解が更に深まります。また、絵本内で疑似体験することで、考えるきっかけをつくり、自然と対話が生まれます。絵本は物語の中でそっと子どもたちに届けてくれる力があるのです。
心がほっこりする絵本、感動で涙が出そうになる絵本…、たくさんの絵本が紹介される中で、ドキッとする内容の絵本がありましたので、この場をかりて紹介します。
1冊目 『二番目の悪者』(小さい書房)
物語の舞台は、動物の住む国。金のライオンは、お金持ちで美しく、街でも目立つ存在です。物語は、年老いた王様が、国民で話し合って次の王様を決めるようにおふれを出すところから始まります。
当然、次の王様候補として金のライオンは名乗りを上げます。ところが、街で対抗馬として噂に上がったのは銀のライオン。彼は心優しいことで知られています。街のみんなは「銀のライオンこそが次の国王にふさわしい」と噂を始めます。
王様の座を危ぶんだ金のライオンは、銀のライオンを陥れるため、良くない噂(根拠のないデマ)を繰り返し周囲に流します。市民は最初のうちは噂を信じなかったのですが、少しずつ噂が本当のこととして口コミで広がっていき、やがて街の広場は銀のライオンの悪い噂でもちきりとなります。そして・・・。
2冊目 あなたへ(6巻)『わたしのせいじゃないーせきにんについて』(岩崎書房)
1人の男の子が泣いており、その子の後ろに14人のクラスメイトが立っています。
ある男の子は言います。「始まった時、見ていなかったからどうしてそうなったのか僕は知らない」
別の子は言います。「僕は怖かった。何もできなかった。見ているだけだった」
弁解は続きます。
「大勢でやっていたの。1人では止められなかったわ」
「始めたのは私じゃない。他のみんなが叩き始めたのよ」
「この子が変わっているんだ。他の子はみんな普通なのに」
「その子は一言もしゃべらなかったんだ。見つめていただけだった。叫べばいいのに」
そしてこう続きます
「だからわたしのせいじゃない」
14人の弁解が終わった後、次のページをめくると・・・、
どちらの本も、大人が読んでもハッとさせられる内容です。情報モラル、いじめといった現代の学校(社会)で起こっている問題にメスを入れています。
『二番目の悪者』では、おそらく初めから悪意のある市民はいなかったと思います。しかし、金のライオンが発した悪意ある噂話に対して、誰も噂の真実を確かめようとせず無責任にその噂を回したため、銀のライオンが悪者に仕立て上げられました。
『わたしのせいじゃない』では、目の前で起こっている間違った行動に対して、誰も「やめようよ。」といった声をあげず、代わりに「私のせいじゃない。」と責任逃れをし、目の前で泣いている男の子を見殺しにしていました。
子どもたちには、①人の心の痛みがわかる人 ②正しいことを見極め、間違ったことに立ち向かえる人に育って欲しいです。そのためにもこれらの絵本を読んでもらい、自分たちの問題に置き換えて考えて欲しいなあと思います。
大人にも読んで欲しい絵本です。ぜひ、いっしょに読んで“わがこと”として考えてみましょう。